労務

ボーナス・賞与の所得税、社会保険と手取り額までの計算を詳しく解説!

私たち、会社員、サラリーマンにとって、唯一!?楽しみな出来事と言えば、夏と冬のボーナスですよね笑

そんなボーナスは、いくらもらえるのか、そもそももらえるのか、もらった場合の使い方等々、色々と考える事は多いと思います。

そして、「無事ボーナスの支給が決まったー!」と安堵していると、少し気になるのは、支給額(額面)から、税金や保険でいくら引かれて、手取りは、いくらになるのかという事です。

実際にボーナスの明細書を見たら、引かれた金額は分かりますが、

「こんなに引かれるのか」「なんでこんなに引かれるんだ!?」と感じる方も多いかと思います。私自身もそうでした。

そこで、今回は、会計事務所職員として5年間働いていて、実際にボーナスの支給計算の業務を毎年行っている管理人が、ボーナスから引かれる税金や社会保険料と手取り額までの計算について、「引かれすぎい!どんな計算になっているんや!」と感じている方々に向けて出来るだけ詳しく解説していきたいと思います。

また、普段、ボーナス・賞与の計算業務を行っている方や労務、経理等々に携わる方々で、賞与の手取りまでの計算ついていまいちピンときていない方々にも、給与計算とはまた違った計算の仕方をしますので、参考になれば幸いです。

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解説の上での前提や言葉の定義、ボーナス計算の流れについて

前提事項

早速解説を行っていきたいのですが、まずは解説の補足となる部分について書きたいと思います。

実際に金額として例示した方がより分かりやすいと感じるため、以下のように管理人がボーナスの支給があった事を想定します。

令和2年8月15日にボーナス支給をもらったと仮定

・30歳独身

・東京都在住

・支給額300,500円

以後、このボーナスの支給額300,500円が所々出てきます。

言葉の定義

また、似たような言葉で混乱するかと思いますので、以下のように言葉を定義したいと思います。

ボーナス=賞与

・支給額=ボーナスの額面

・手取り額=税金、保険料が引かれた残りの金額

この記事は、ボーナスと賞与の言葉が入り混じっているかもしれませんが、同じ意味だと捉えて頂けましたらと思います。

ボーナスの手取り額に至るまでの解説の流れ

社会保険料→所得税→手取り額と順を追って解説します。

理由としては、手取り額までの計算では、上記の流れの通りに計算するとスムーズになるためです。

そして、保険料と税金は、それぞれ、計算根拠となる保険料率、税率があります。

まず、それら料率を求めた後に実際の計算をしています。

それでは、早速解説します。

賞与の社会保険料の計算方法について

賞与(給与も同じく)の社会保険料には、下記の3種類がありまして、基本的には、賞与の支給額に保険料を掛けると保険料が求まります。

社会保険料

・健康保険(40歳以上の方は介護保険料もあり)

・厚生年金保険

(健康保険と厚生年金は同じ料率表を使用して、似たような計算をします。)

・雇用保険

ここからは、実際に健康保険と厚生年金保険の保険料率の求め方と計算方法を先に解説して、次に雇用保険についても同様に解説します。

健康保険と厚生年金の保険料率と計算の仕方

用意するもの

最新の保険料額表についての表を用意します。

(ここで取得できます。都道府県毎の保険料額表 参照先:全国健康保険協会)

上記をクリックして頂きますと、

都道府県毎の保険料額表というページが出てきますので、

最新年度保険料額表を選択

最新の月の保険料額表

都道府県が出てきますので、ご自身の都道府県を選びます。

今回は、一例で東京都のものを実際に印刷したものを載せます。

写真で載せた表の上のオレンジでマーカーしている箇所に健康保険と厚生年金の保険料率が記載されています。

写真の表のようにその保険料率を×1/2します。

(×1/2する理由は、健康保険と厚生年金は、企業とボーナスをもらった会社員で保険料を折半するためです。保険料額表に記載されている料率は、事業者と会社員の保険料を合わせた料率になっています。)

ここで求めた%を支給額に掛けます。

また、今回は、30歳の管理人が賞与をもらったため、介護保険料の負担は発生しないため、料率9.87%×1/2となります。40歳以上の方がボーナス支給された場合は、料率は11.66%×1/2となります。

ここで計算上の注意点ですが、賞与支給額に保険料率をかけると説明していますが、

注意ポイント

健康保険と厚生年金に関しては、賞与支給額に1,000円未満の端数がある場合は、切り捨てて、計算するため注意が必要です。

例えば、

支給額が300,500の場合

健康保険300,000×4.935%=14,805

厚生年金300,000×9.15%=27,405

のようになります。

上記の根拠としては、日本年金機構のHPに以下のように規定されているためです。

賞与にかかる保険料は、実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」とし、その「標準賞与額」に健康保険・厚生年金保険の保険料率をかけた額です。
参照:日本年金機構従業員に賞与を支給したときの手続き

これで、ボーナスにかかる健康保険と厚生年金の保険料の計算は完了です。

雇用保険料の保険料率と計算の仕方

次に雇用保険料について解説します。

用意するもの

最新の雇用保険料率についての表

(ここで取得できます。雇用保険料について 参照先:厚生労働省)

保険料率は、0.003(一般の事業)か0.004(建設事業や農林水産業)で分れますので、ご自身に近い業種で選択しましょう。詳しくは、事業所によって料率が決まっています。

賞与支給額に表に記載されている雇用保険料率をかけます。

支給額が300,500の場合、

300,500×保険料率となります。

注意ポイント

健康保険と厚生年金とは違い、切り捨て等はせずに、支給額にそのまま保険料率をかけます。

300,500×0.003=901.5=901

これで雇用保険料の計算は完了です。

あと・・・

細かい話ではありますが、

雇用保険料は、1円以下の小数点の端数が出た場合、基本的には50銭未満の端数があるときには切り捨て、50銭以上1円未満のときには1円に切り上げ事になっていますが、端数が出た場合は、切り捨てても大丈夫です。

1円未満の端数が生じた場合、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」第3条に基づき、債務の弁済額に50銭未満の端数があるときには切り捨て、50銭以上1円未満のときには1円に切り上げることとなります。
なお、この端数処理は、債務の弁済を現金で支払う時点で行うことから、雇用保険の被保険者負担額を賃金から源泉控除する場合には、事業主が被保険者に控除後の賃金を現金で支払う時点で端数処理を行うこととなるため、結果として50銭以下の場合は切り捨て、50銭1厘以上の場合は切り上げとなります。
ただし、これらの端数処理の取扱いは、労使の間で慣習的な取扱い等の特約がある場合にはこの限りではなく、例えば、従来切り捨てで行われていた場合、引き続き同様の取扱いを行ったとしても差し支えありません。

参照:厚生労働省 労働保険料の申告・納付◎ 雇用保険の被保険者負担額と端数処理について

 

賞与の所得税の計算方法について

ここからは、所得税の計算方法についてお伝えします。

税率の求め方

社会保険料よりも税率の計算過程は結構、独特です。

用意するもの

・賞与が支給される月の前月に支給された給与明細など(前月に支給された給与が分る書類)

この明細から社会保険料控除(差引き)後の給与等の金額を求めます。

今回は、8月15日にボーナスが支給されるという事で想定しているため、7月に支給のあった給与明細を用意して、税金がかからない課税支給額から社会保険料を引きます。

そして、計算をすると、写真のように212,599円となります。

 

ここで、なぜ、唐突に前月分の社会保険料の差引後の給与等の額を求めたか疑問に感じると思います。

ここがボーナスの所得税計算において独特な計算過程の箇所ですが、次の所得税の税率を求める際に使うためです。

 

では、実際に税率を求めていきましょう。

用意するもの

最新の賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表

(ここにあります 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表 参照先:国税庁 令和2年分 源泉徴収税額表)

今回は、甲欄(給与所得者の扶養控除等申告書を提出している方や1か所のみ勤務の方)で、扶養人数0人の管理人を想定してます。

ここでは、写真のようにご自身の扶養親族の数の該当する列と先ほど求めた前月に支給された社会保険料控除後の給与等の金額を表の中に当てはめます。

今回は、扶養親族0人で、前月に支給された社会保険料控除後の給与等が212,599円ですので、4.084%がボーナス・賞与にかける所得税率と求められます。

ここまでが賞与に係る税率の求め方でした。

賞与の税額の求め方

では、最後に賞与の税額の求め方です。

支給額300,500
健康保険▲14,805
厚生年金▲27,450
雇用保険▲901  
257,344

この金額に先ほど求めた4.084%をかけます。

257,344×4.084%=10,509.92.....=10,509

 

ここでも細かい話ですが・・・

源泉所得税は、1円以下の小数点の端数が出た場合、切り捨てになります。

給与所得の源泉徴収税額の求め方 〔税額の計算〕(参照先:国税庁 令和2年分源泉徴収税額表)にて明記されています。

これで、ボーナスにかかる所得税が求まりました。

手取り額の計算について

ここまで、お疲れ様でした。

それでは、最後に手取り額の計算について説明します。

説明というほどでもないのですが、
賞与・ボーナスの支給額から今まで求めた社会保険料と所得税をそれぞれ引きます。

今回の場合は、
支給額300,500
健康保険▲14,805
厚生年金▲27,450
雇用保険▲901
所得税▲10,509  
246,835

と以上のようになります。

 

これで、ボーナスの支給額から手取り額までの計算が完了しました。

いかがでしょうか?

今回は、支給額を300,500と設定したのですが、手取り額は5万円以上も減っています。

いや~取られますよね苦笑

およそ、支給額の17%は社会保険料と所得税で取られています。

ここまでで、支給額と手取り額のイメージは何となく掴めたでしょうか?

ただ、自分でも書いてみた細かいなぁ~~とは感じます。笑

そこで、今までの一連の流れを下記にまとめてみました。あまり内容が頭に入ってこなかった方なども良ければ、そちらもご参考下さい。

まとめ(ボーナス支給から手取り計算までを表にまとめてみました)

ここまでの支給流れを下記にまとめてみました。

前提

前提

ボーナスをもらう人

管理人 かしスマ

30歳 独身 東京都在住

支給額300,500 令和2年8月15日支給

金額(円)料率、税率使う表計算方法計算注意
賞与支給額300,500
健康保険14,805保険料額表×1/2
9.87%×1/2=4.935%
保険料額表(東京都)300,000×4.935%支給額(1,000円未満切り捨て)×料率
厚生年金27,450保険料額表×1/2
18.3%×1/2=9.15%
保険料額表(東京都)300,000×9.15%支給額(1,000円未満切り捨て)×料率
雇用保険9010.003か0.004雇用保険料について300,500×0.003支給額×料率
社会保険料合計43,15614,805+27,450+901
社会保険を除いた支給額257,344300,500-43,156
所得税10,509扶養人数と前月支給の給与の社会保険料を除いた額の交わるところ賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表257,344×4.084%
手取り246,835300,500-43,156-10,509

さいごに

賞与の社会保険料と源泉所得税の計算方法について説明しました。

近年は、給与ソフトにて賞与の支給額を入力すると、手取り額までほとんど一発で自動計算してくれるのが当たり前です。

そのためか、ボーナス賞与について、社会保険料と所得税の両方と手取り額までの計算を細かく解説しているサイトは、探した範囲では見つかりませんでした。

ですが、どういう計算になっているか気になる方も少なからずいるかなとも思います。

そこで、今回、そういった方々などに向けてボーナス賞与の手取り額までの計算過程を書いてみる事にしました。

書いてみて分かったことがあります。それは、なかなか書きにくく、書いてまとめるのにかなり時間がかかったという事です。苦笑

その点、時間はかかったものの、賞与・ボーナスの社会保険料と所得税についての仕組みについて詳しくまとめられたと思っていますので、是非参考にして頂けましたら幸いに思っています。

それでは、最後までご覧いただきまして、大変ありがとうございました!

  • この記事を書いた人

kashisuma

会計事務所でいわゆる社畜として働く管理人。現在28歳。簿記3級も知らないまま、入社。現在入社3年半で、会計税務の一通りに業務内容をようやく覚えてきました笑 お客さんには結構な人見知りと、極度のあがり症からくる変なキャラがうけ(!?)会計の担当先として、20件ほど持たされ、てんやわんやになりながら何とか奮闘中。 少しでも、賢くスマートに振舞えたらとの思いで、ブログを開設。自分自身の備忘録と読んでいただいた方が少しでも心に引っかかる記事であったらと思います。 (2018年11月24日更新)このブログ開設後にFP2級と3級を取得。会計事務所での勤務は依然てんやわんやになりながら、なんとかこなしています笑

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