会計・税務

家賃の先払いを経費に!短期前払費用を出来るだけ分かりやすく解説

今回は、決算前の節税という事でご紹介したいと思います。

家賃の先払い(前払い)を経費にという事を記事名に上げていますが、急に「短期前払費用とは何だ!?」と思われる方も多いかと思います。

事業用費用を先払いしてそれを経費にして利益を減らし、節税に繋げましょうという考え方です。

この短期前払費用の代表的なものとして家賃を前払することによってそれを経費計上して節税にするということが有名です。

個人で事業されている方にも法人でも使える節税の方法として知られていますが、活用するために微妙な要件などもあって、分かりにくいなとも思います。

あまり堅苦しい表現などは使わずに普段会計などについてあまり触れない事業主や経営者の方がでも分かるような形で書いていこうと思っております。

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家賃を前払いして経費に!短期前払費用について出来るだけ分かりやすく解説

まずは、この短期前払費用ですが、わかりやすく言うと、未来(来期)に発生する費用を(今期)先払いすることで今期の費用にすることが出来るという考え方です。

事業用の費用については、支払った時に費用計上するか、費用が発生した時に費用計上するかが基本的な考えですが、ここで紹介する費用の先払いは、その基本的な考え方の例外となります。

ただし、未来に発生する費用を無制限に費用化すると収集がつかなくなるから、向こう1年間先(短期)までの費用を先払いした時と限定して、今期の費用計上とすることが可能だと解釈されています。

改めてまとめると、

短期前払費用・・・1年先までの費用を先払いすることによって、その分を費用(経費)計上可能とするもの。例として、家賃の前払いなど。

ここで、少し図を使って簡単にご紹介します。

・期末は12月とします。家賃10万円です。ここでは、翌月分の家賃を前月末に支払う契約を結んでいます。

・2019年は1月~12月の間に毎月10万円で合計120万円の家賃を支払っています。

・利益が出てきたため、2019年12月より家賃の支払いを、「翌月分を前月末→翌年分をその前の年の期末である12月に支払うという契約に変更」したとします。2020年分の1年分120万円を2019年12月に支払いました。

上の図の場合、結果的に2019年の家賃に係る費用は240万円と120万も利益を減らすことが出来ています。

ちなみに2020年は2021年分の1年間を12月に支払うため家賃は120万円経費計上することが出来ます。

 

自身の担当するお客さんの事例では・・・

駐車場代を決算月に支払いを1年分を前払いにする契約に変更し、来年分の駐車場を今期に支払いその分を利益にして節税にしたという事例があります。

ただし、その時は、決算前ギリギリでの提案により、決算月での1か月の間に相手先との交渉、賃貸借契約書の変更、1年分の支払いとギリギリの中での実行でした。

ものすごくプレッシャーの強いお客様なので、かなりの冷や汗ものでした苦笑「もっと前に教えてくれよ~」と言われてしまいました・・・反省です。

支払い方法の変更と相手先との交渉やその後の賃貸借契約書の変更なども必要になり時間がかかるため、私の事例にように決算前でギリギリになって焦らないように今期利益が出そうだということが分かれば、早い段階での検討と取り掛かりが必要であると思います。

短期前払費用についての要件や注意点と仕訳は?

先払い費用を経費とする場合は、そのような処理にするための要件やいくつか注意するべき点もありますので、それをご紹介しようと思います。

短期前払費用になる費用は?

先にどのような費用が短期前払費用になるのかをご紹介したいと思います。

下の内容が結構長くなってしまったので、「ややこしい!じゃあ一体どんな費用が前払費用になるのか?」

と疑問を持つ方もいらっしゃるかと思いまして、まずは以下のような費用が前払い費用としてOKと覚えていたらいいかと思います。

ポイント

・家賃
・駐車場代
・リース料
・賃貸料
・会費

短期前払費用の要件や注意点について

上に紹介した内容では、通常ならば120万円しか経費計上出来なかった駐車場代がもう120万円も費用計上されてその分利益を減らし、節税に繋がっています。

それなりに大きな節税につながります。そのため、この処理を使う場合は注意するべき事項や要件があります。

国税庁のHPにてこの1年先までの費用の先払いについての要件などの説明が記載されていますが、はっきり言って分かりずらいです(苦笑)。

そのためここでは、1年先までの費用を前払いする際の必要な要件などを自分なりの言葉に置き換えて紹介したいと思います。

条件は主に下の3つありますが、その全てを満たす必要性があります。

①短期前払費用の対象となるのは、一定の契約(数年単位の契約)に基づいて、継続的同じようなサービスを同じ金額で支払う費用(”もの”の購入は対象外)。

②支払った後、1年以内に受けるサービス。(実務的な処理では、期末の月末に翌期の1年先までの費用を支払うとOK)

③費用を前払いした際の処理を翌年以降も毎年継続させる。

上記内容について補足します。

①に関して・・・

家賃や駐車場代などは一定の契約に基づきサービスの提供を受けるものとして最たるものですので、前払費用を活用する場合はまず検討すると良いかと考えます。また、短期前払費用の間違いとしてよく指摘されるものとして税理士顧問料は前払費用にはならないと考えられています。(毎月、同じようなサービスで同じような金額だと限らないからという理由です。)

②に関して・・・

支払った日より1年以内にそのサービスの提供を受ける必要があります。厳密な解釈をすると2019年12月25日に来年1年分の支払いをした場合、2020年12月25日までが短期前払費用という扱いですが、実務上の運用では12月25日ごろの支払いにて来期分の1年間の費用を支払ったということで扱われます。上の図のように12月が期末の場合、12月の下旬ごろに翌年の1月分を支払えば、別に問題ないと考えます。

③に関して・・・

その年のみ1年分の費用前払をして次の年にすぐに月払いのように払い方を元に戻すなどはできないということです。利益が出たその年だけ都合良く前払いするのは認めないと国税庁は考えているようです。そのため、短期前払費用の処理をした場合は、翌期以降も同じように支払い同じ処理をする必要があります。

短期前払費用の仕訳について

また、③の内容に関連して具体的な仕訳は以下のようになります。

前払いで支払った日(例で12月25日とします。)に上記のような仕訳をします。そして、翌期以降も同じような処理をする必要があります。

以上のような注意点などもしっかりと踏まえて万一の税務調査などのために備えることも必要かと考えます。

また、単純に利益を減らしたいからという理由のみでこの短期前払費用に突っ走るのは危険と考えます。

現実の出費として現金を支払うことになるので、上の例では家賃1年分120万円の現金が減ってしまいます。利益のみにフォーカスをあてると、そのあたりを考えなくなってしまいがちなので、資金繰りの状況もしっかりと考えておいた方が良いかと思います。

まとめ

家賃の前払いを経費に!短期前払費用を出来るだけ分かりやすく解説として、家賃の前払いを例に挙げて記事にしてまいりましたが、いかがでしょうか?

最後に今回ご紹介した短期前払費用について簡単にまとめてみたいと思います。

 

ポイント

・1年先までの未来の費用を先払いして今期中の費用にする。

・この短期前払費用を使う場合は要件があるためそれらがすべてクリアされているか確認する。

・前払費用を検討する場合は相手先との交渉や契約内容の変更もあるため早めの検討と計画を!

 

ここまでご覧頂きまして、ありがとうございました。

※この記事に関する内容は、投稿日現在における法令などに基づいて作成しておりますので、法令などの変更があった場合は加筆修正などを行いたいと思います。

 

  • この記事を書いた人

kashisuma

会計事務所でいわゆる社畜として働く管理人。現在28歳。簿記3級も知らないまま、入社。現在入社3年半で、会計税務の一通りに業務内容をようやく覚えてきました笑 お客さんには結構な人見知りと、極度のあがり症からくる変なキャラがうけ(!?)会計の担当先として、20件ほど持たされ、てんやわんやになりながら何とか奮闘中。 少しでも、賢くスマートに振舞えたらとの思いで、ブログを開設。自分自身の備忘録と読んでいただいた方が少しでも心に引っかかる記事であったらと思います。 (2018年11月24日更新)このブログ開設後にFP2級と3級を取得。会計事務所での勤務は依然てんやわんやになりながら、なんとかこなしています笑

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